2018/12 更新
東チモール、エチオピアへ行ってまいりまして、精製や乾燥工程の写真をたくさんGETしてきましたので
より分かりやすくお伝えできるよう更新致します!
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○コーヒー豆をいかに乾燥させるか
精製の種類をみていく前に、なぜ精製という過程が必要なのか、
コーヒーチェリーがどういう仕組みになっているか見てまいりましょう
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このように、コーヒーノキになる木の実がコーヒーチェリーです。
この中に、原則2粒が1対になった種子が入っています。それがコーヒー豆です。
じつは豆じゃなくて、種なんですね
(生育条件諸々によって、1粒や3粒の場合もあります)
実 ですので当然 皮 や 果肉 があるんです
その内側にすぐコーヒー豆かと思いきや、豆は殻で覆われています。
さらにその殻には、ヌメヌメした粘液質がついています。
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殻→内果皮 / パーチメント とか呼ばれます
ヌメヌメくん→粘液質、ミューシレージ とか呼ばれます
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これらを取り除いたり、あるいは実のまま乾燥させたりというのが精製過程にあたります。
ちなみに精製が終わると、数か月間パーチメントがついたまま寝かせて、水分値が低くなるのを待ちます。
水分値の高いまま出荷してしまうと、消費国に到着する頃にはカビが生えたりなんたり、ダメになってしまうからです。
基本、船便ですので。。

↑パーチメントに包まれて、水分値低下待ちの状態
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!チェリーの構造!
<皮→果肉→ヌメヌメ→殻→種子(コーヒー豆)>外からこの順番です!
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精製の種類はいくつかパターンがありますが、農園の地理条件や自然環境、インフラ設備の程度などでどれをチョイスするか左右されてきます。
ただ、近年のスペシャルティコーヒー事情で言いますと、消費国側が生産者側にオーダーして、特定の精製をお願いするケースも増えています。
嗜好の多様な需要があるのですね
それでは以下 チェケラーしてまいりましょう
・水洗式 / Washed, Fully Washed(FW)

最も目にすることの多いのがこちらの水洗式、『ウォッシュド』『フリーウォッシュド』とも呼ばれます。
名前の通り、皮、果肉、ヌメヌメくんを洗い流してから乾燥させる方法です。
皮、果肉を剥くのにパルパーという機械を使ったり、ヌメヌメくんを取り除くのに発酵槽に漬けたりします。
『パルプドアンドデミューシレージド』というパターンもありますが、商品名として見かけることは無いので気にしなくて大丈夫です…
(ちなみにミューシレージを発酵させずに機械で強制的に取り除いたモノをそう呼称します)

↑パルパー: コーヒーチェリーを投入して、果肉を剥ぎ取ります

↑パルパーにかけた後、このようなタンクに水を張り最長72時間程度浸すことで、微生物の働きでミューシレージが取り除かれます

↑さらに扱きながら水洗い、たくさん水が要りますね

↑その後やっと乾燥です。乾燥台に平たく並べて、その間にハンドピックも行います
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・乾燥式 / Natural / Dry process
『ナチュラル』と呼ばれることが多い印象です(海外の方はdry processと呼ぶこともあります)、
こちらは収穫した実をそのまま乾燥させます。実のまま、脱穀ナシ!
果肉がついたままなので、生豆の色も水洗式とは異なり、特有の香りがあります。
慣れてくると生豆、焙煎豆、味わいだけで『ナチュラルじゃん』と分かるくらい特徴的です。
果肉に水分があるので、乾燥中に発酵しすぎる、頻繁に撹拌しないと一部だけ乾きすぎる、
適切な水分値になるまで日数がかかる、乾燥台を占める面積も広くなる…などといったデメリットがありますが、
昨今の手間ひまかけた高品質のナチュラルのコーヒーは、誰がどう飲んでも分かるほどの素晴らしいフルーツ感があります。
ですので 高品質コーヒーとしてはウォッシュドより高価であることが多いです。
攪拌しては水分値を計測して、の繰り返しということで、実は難易度も高いとのことです!

↑奥側は、日数が経ち変色してますね
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・半水洗式 / セミウォッシュド (Semi-Washed) / パルプドナチュラル(Pulped Natural) / ハニープロセス(Honey process)
『半水洗式』『セミウォッシュド』という言い方はかなり曖昧というか、ざっくりしすぎているところがありますので、
『パルプドナチュラル』『ハニープロセス』と呼ぶ方がより明確です。
どちらも同じなのですが、
『パルプドナチュラル』はブラジル産のものに使われ、
『ハニープロセス』は中米産のものに対して使われます。
→中米(スペイン語)ではミューシレージ(ヌメヌメくん)のことを「ミエル(miel)」と呼び、ハチミツのことも「ミエル」と呼ぶのでこのように呼ばれます。
ハチミツが使われていたり、ハチミツのような風味になるからではありません!が、
ハチミツのような風味になることもソコソコあるような印象です…
以上のように、中南米で見かけることの多いプロセスですが、
パルパーにかけて皮、果肉は取り除くものの、そのあと乾燥…
つまりヌメヌメくんがついたまま乾燥させるのです。
ウォッシュドよりも特有の甘味のある香味になり、ナチュラルほどクセのある味わいにもなりません。
ヌメヌメしてるので、乾燥中に豆同士がくっついてカッチカチになります。こちらも要撹拌で、手間暇かかります。
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中米のコスタリカでは特にこのプロセスについて先進的で、ヌメヌメくんをどの程度の割合残すかによって細分化しています。
各地で多少の差はあると思いますが、ざっくり以下のようにまとめられます!
○ホワイトハニー
90%程度除去
○ゴールデンハニー
75-80%程度除去
○イエローハニー
50%程度除去
○レッドハニー
20-25%程度除去
○ブラックハニー
全く除去せず
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それぞれで乾燥のスピードも違うので、そのあたりの細かい工夫の違いがあるようです。大変ですね
このためハニーコーヒーも基本的に高価なことが多いです!
今ですと当店、ブラックハニーのコスタリカ・ソノラ農園のものが販売中ですが
当農園はハニーとナチュラルしか製造してないらしいので、かなりの栽培スキルをお持ちなのでしょう。
コスタリカは全体的に特徴のないコーヒーになりやすいので、精製で違いをつけるのは理に適った方法と言えます。
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・スマトラ式 / Traditional Sumatran process
インドネシアのスマトラ島は、独自の精製処理方法があります!
まず果肉除去、そしてヌメヌメくんがついたまま乾燥させますが、半乾きの状態でパーチメントを脱穀!そして生豆の状態で再び乾燥させます!
こうして書くとランボーなやり方にしか聞こえませんが、乾燥前の生豆は非常に柔らかいですので、生豆にしてからの乾燥中に形がいびつになりますし、実質ランボーだと思います‼︎
いわゆるマンデリンの生豆が濃い緑色であったり、変わった形のものが多いのはこのためですね。
ちなみに生豆にしてから乾燥させるので、通常の水洗式よりもずっと短い期間で乾燥し終えることができるようです。
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以上 いかがでしたでしょうか。
慣れてくると、焙煎度合+精製方法でコーヒーを選べば、ほぼ100%好みのコーヒーに出会えるのではないでしょうか。
「おっイルガチェフェのナチュラルじゃん」とか気付けるようになってきます!
コーヒー屋さんに行って精製の話をするもよし、
ご友人にオススメする際にも役に立つこと間違いありません。
きっと素敵なコーヒートークができることと思います!

初めてこの記事を書いたときから今に至るまでの間でも、
いろんな書籍が出ましたし、情報だけならググればいくらでもGETできる時代になったように思います。
仕事にしているからといって、その方が詳しいわけでもない状況になりかねません…
(barista hustleみたいなサイトもありますし)
そんななか2018年は2カ国も生産国は行くことができました。
これからも聞かれれば答えられるコーヒー屋さんであり続けます!